[四十三]  神様がご主人、自分は奉公人(4)

家賃の値上がり─赤飯たいて祝え

 ある年のことです。ある信者が「先生、家主が替わりまして、四十円の家賃を、一度に倍に上げて、八十円にすると言うのです。どうしたらよろしいでしょう。困っています」と言って、相談に来ました。

 「なるほど、それなら、三軒家の先の鶴町辺に行って、二階借りでもしたらいい。五円ぐらいの家賃で、安い家がたくさん空いているから」

 「でも、そんなところへ行ったのでは、商売ができません」
 
 「それは、商売はできない。あんたは、家賃が高くなるのをやかましく言うから、家賃の安い家があることを教えてあげているのだ」

 「先生は、そんなことをおっしゃいますが、今でもやってゆきにくいのに、この上にまだ家賃が倍になりましたのでは……」
 
 「あんたはやってゆけないと言うが、やらせてもらえるようにと、お願いしたらいいではないか。何のために信心させて頂いているのだ」


 「ですから、家主が家賃をもう少しまけてくれますように」

 「そんなばからしいお願いはようしない」
 
 「どうぞ先生、そこのところを」
 
 「いや。大体、今までの家賃が安すぎたのだ。家主が替わって、値上げは当然だ。あんた、日頃の話をどう聞いているのだ。あんたの商売は、一体誰の商売なのだ。ご主人は、どなただと思う。ご主人、親方である神様は、生きた神様だ。どんなにでもして下さる親神様に、そんなばからしいお願いはできない。あんたは家賃が上がることを苦にしているが、それは、あんたがご主人から、働きのある番頭として、高い値打ちをつけられたからであって、おかげを蒙っているのだ。不足を言うどころか、お礼を申して喜ばなければならない」
 
「でも、これまで毎月、足りない足りないで、借金が五百円もできています。それに、家賃が倍に上がって、何がおかげですか」
 私の言うことが、なかなか分かってくれませんので、私は話を続けなくてはなりません。
 「借金は借金、家賃は家賃だ。四十円の家から、一足とびに、八十円の家に住まわせてもらう。これをおかげと受けて、おかげを蒙ってゆくのだ。私だったら、赤飯を炊いて祝わせてもらう」
 「へえー、赤飯をたいて祝う?」

 「そうだ。家賃が五円の家に住むのと、十円の家に住むのとでは、どれだけ人間の値打ちに上下ができるか。私は、十円よりも二十円、二十円よりも五十円、五十円よりも百円と、なるべく家賃の高い家に住めるようになりたい。なぜなら、高い家賃の家に住めるほど、それだけ、その人に値打ちがあるように思われるからだ。裏長屋のすみであったら、家賃は安い。
しかし、いつまでもそんな家にくすぶっていたのでは、どうにもならない。人間は、時と場合によっては、そんな家に入らなければならないこともあるが、仕合わせなことに、そんな目にあわないですんでいるとしたら、それを喜ばなければならない。あんたも、値打ちが出てきて、八十円の家に住めるようになったのだ。赤飯を炊いて祝いなさい。
家へ帰って、神様に申し上げなさい。あなたのお住まいは、これまでは、家賃が四十円でございましたが、家主が八十円に値上げしてきました。どうぞ、来月から八十円ずつ支払って頂けますように″と、こうお願いしなさい。そうしたら神様は、ご自分のお住まいのことだから、あんたが心配しなくても、ちゃんと家賃を払って下さる」
 と言いますと、その人は私の言ったことが腹に入ったのか、いそいそと帰って行きました。

 その後、一年が過ぎまして、
「先生、また家賃を上げてきました」
「いくらほどに」
「三十円上げて、百十円に」
「そら結構だ」
「また、赤飯ですか、おかげですもの」
 一年前に、この問題はすでに卒業していますから、あれこれと言いません。
「分かったか。おかげを蒙ったな」
「はい、あれからずっとおかげを蒙って、毎月八十円の家賃も払い、借金の方もきれいに片がつき、少々の貯金もできまして、有難いことです。もう、いくら家賃が上がっても、びくともいたしません」
「大そう強くなったものだ」
 と、私も、その勢いに驚かされました。それからほどなく、三度目の値上げで、また二十円高くなりましたが、これも差し支えなくおかげを蒙りました。

 ところが、四度目には、家明けの申し渡しでした。
「先生、家を明けてくれと言って来たので、立ち退かなければなりません」

 「それはおかげだ。もしも、家賃が四十円の時に、家明けを言われていたら、どうであっただろう。四十円の家賃でさえ、ふうふう言っていたのだから、とても耐えられなかったであろう。今では、百三十円の家賃でも、びくともしないおかげを蒙っている。それだけの家賃が払えるなら、どこにでも家は見つかる。これはおかげだ」

 神様の深い思召しは、目先ばかりにとらわれがちなお互いには、測り知れないものがあります。奉公人になっておかげを蒙るのが何よりであります。

<2009年1月掲載>
(「我が信心の歩み」の内容は毎月更新されます)
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