かんべむさしのこぼれ話
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 かんべむさし

  1948年1月16日生れ 兵庫県出身の小説家、SF作家、エッセイスト。
  (かんべむさしWikipediaより)  金光教玉水教会信徒

 

連載第24回

見たこともない物


――「そんなら、行灯(あんどん)おろしておいで」(そのころのお茶屋は、戸口にそのお茶屋の名前を書いた行灯をかかげていた)私の言うままに行灯をおろしてきましたので、私は煙草をのむキセルで「見てなさい」と言うて、一方に「天地金乃神」、他の一方に「生神金光大神」と書いてあげました――(信話第四集196頁)




原文では「行灯」に「あんどん」と読み仮名が振ってあり、引用文のごとく註釈も加えられていますので、若い方も、大体どんな物であるのかは見当がつくと思います。しかし、その現物を見たことがあるとか、使ったことはないけど家の蔵にしまってあったとかいう人の数は、限られていることでしょう。実は私も、内部の光源は電球という「まがいもの」は知っていても、本物は見たことがありません。本物の光源はロウソクではなく、灯明皿に菜種油などを入れ、そこに灯心と呼ばれる植物繊維から作った紐(ひも)のような物をひたして、その先端に火をともしていたのですから、その明るさ(暗さ?)にも見当がつきます。
こういう「本物を知らない」という事例は、戦後あるいは高度成長期以降どんどん増えてきて、現在ではプロの落語家志望者が、釣瓶(つるべ)井戸、七輪、火鉢、タドンなどはもちろん、引用文中にあるキセルも、知らない、見たことがないという例が多いそうです。
 また、その師匠にあたる落語家も、いまの四十代や五十代という人ですから、自分自身も直接には知らないので、大福帳、五つ玉の算盤(そろばん)、矢立(やたて)、昔の小銭など、古道具屋や骨董市(こつとういち)で買い集めている人もいるとのこと。江戸時代の暮らしとか、時代劇入門とか、そんな本にはそれらを写真や絵で見せているものがありますが、教典、伝記、信話集にも、すでに同様の資料本が必要になっているのではないかと思います。




 
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