「教風」 (連載第94回)


 なるべく前へ


 このたび耐震工事に取りかかることになりました。日本最古の建設会社、金剛組に依頼してお広前を調べてもらったところ、震度7の地震には耐えられないのではという結果が出ました。補強のための壁をお広前につくれば工事は簡単で費用もかさまずにすみます。しかし、なるたけお広前の現状を変えないようにとお願いし、ワイヤーで補強したりする工法を採用したため、工事の規模も時間も大掛かりとなってしまいました。ご大祭終了後から秋の霊祭直前まで工期となります。
ご参拝の皆さんには、ご迷惑をおかけしますがご了承下さい。
 お広前を詳しく調べた金剛組の方は、木造建築に精通しているので、使われている木材のすばらしさに驚いておられました。屋根裏のような目に付かないところにまで良い材料が使用されており、また外気にさらされている部分でもお広前は竣工後八十年近くたつのに、せいぜい三十年程度の建物のようだというのです。さすがに初代大先生が精魂こめて選ばれた木材であるなあと思います。また修繕工事ではお広前を床暖房にします。

 ○床暖房にします
 床暖房はお広前をいくつかのエリアに区切り、それぞれに入り切りのできるシステムです。私は一番前の神さまに近いところを常時ほかほかとしておきたいと考えています。参拝の皆さんになるべく前へ座ってほしいからです。
 確かにお参りの方には、それぞれ気に入った場所があることは承知しています。その場所に座れば落ち着いてご祈念できるのでしょう。
 ただどうでしょう。家族の病気や商売の資金繰りが苦しいなど必死のお願いのときは少しでも前の方へ神さまに近い方へという気になりはしませんか。「なんとかおかげをいただきたい、どうしてもおかげにしなければ」という切羽詰まった思いが体を前へ進めるのです。ということは、後ろの隅っこでご祈念するのは、やはり一心がいささか欠けてしまうということになりはしないでしょうか。せっかく参拝したのですから力強い祈りを捧げていただきたい。
 昔から「玉水の信者さんはご祈念が長い」と言われます。他教会の先生が感心されたと私も聞かされたことがあります。今も皆さん長くご祈念されていて有難いことだと思っております。
 しかし昔の玉水教会では、信者さんがもっと前へ前へ競うように寄ってご祈念されていたように思いますが、こちらのほうは今は若干様子がちがうようで残念です。つんのめるように小走りで参ってきて、お広前の最前列につつつっと寄って懸命のご祈念をするというような姿が多く見受けられ、熱気を放っていました。前へ進むという形だけでも祈りの持ち方は違ってくると思います。
 と申しますのは、私自身がこのごろは会合や講演会などでなるべく前へ座るということを心がけているからです。一番前へ座れば居眠りするわけにはいきません。とにかく常に緊張感をもつことを強いられます。気が抜けません。それだけに参加した充実感も大きいのです。見返りはあるのです。人間相手の会合でもそうなのですから、神さま相手なら尚更で違いは歴然でしょう。声を大にして言いたい。
「お参りの皆さん、前へ座りましょう。なるべく前へ進みましょう。ご祈念が違ってきますよ。おかげも違ってくるはずです」と。



(この「教風」は、2013年4月に掲載されたものです)
TOP
バックナンバー一覧