「教風」 (連載第112回)


 スカウト立山登山



 八月に夏のスカウトキャンプに同行しました。当初は予定がなかったのですが、「十六年前のリベンジでっせ」という世話役の信者さん方の意気込みに押されて参加しました。十六年前にボーイは、風雨のため立山登山を断念していました。 

 出発を待っていると、カブの男の子がバスに乗るのを嫌がっている姿が見えました。帰りたい、とグズッています。あれだけ嫌がったら親御さんが連れて帰るだろうな、といった様子でした。
 しかし親御さんは現れず、前回もこんなでしたから大丈夫です、とリーダーがなだめすかしてバスに乗せていました。最初の休憩のときには平気な顔していましたので、なるほど、と思いました。
 残念ながら今回も天候にはあまり恵まれませんでした。
 
 ○「どうしても登りたい」
 室堂というところから雄山の頂上を目指します。室堂に着いた時点で雨は降り出していました。室堂から途中の一の越という山荘のところまでは道が整っています。一の越から山頂までは尾根伝いに高低差300メートル。晴れていれば景色を楽しみながら、何ということもなく登れてしまうルートです。しかし今回は風雨が厳しいので、カブスカウト(男子)ジュニア(女子)の小さい子は一の越までで見合わせよう、無理はさせないように、と決めました。 なにしろ雨は上から降るものだという常識が当てはまらない。雨は横から来るのです。時によっては下から吹き上ってくるのです。高い山の難しさを痛感しました。三年前に富士山に登った経験があるので、少し甘くみていました。空気こそ富士山のように薄くはないものの風雨の立山は富士山以上でした。

 カブの小さい子の中で「どうしても登りたい」とがんばって付いて来る子がいました。途中で引き返すだろうと見ていると、頂上まで登りつきました。なんと出発のときグズッて行くのを嫌がったあのスカウトでした。つくづく人間というのはいろいろな面があるものだと感心したようなことでした。
 ほぼ全員が登頂しました。登ったら降りなければなりません。しかし、この下りがまた大変なのです。雨で視界の利かない岩山を降りるので、一歩一歩慎重に足をおろしていかなければなりません。私はカブの子に同行していたのですが、小さい体にリュックが案外大きい。後ろから見ていると、降りるたびに大きなリュックがひょこひょこ揺れてバランスをとるのが大変で、なかなか進みません。たまらずその子のリュックを持ちました。そして前を行く若いリーダーにその荷物を預けようと、私は一人先を急ぎました。

 ところが急いでいるのに一向に追いつきません。そのうちすってんと後ろへひっくり返ってしまいました。リュックを背負っているので怪我はしませんでしたが、焦りは禁物、信心と同じだ。と慎重に降りました。
 さて解散式のとき、くだんのカブの少年を特別表彰しました。名前を呼ぶと飛び上がって驚いて、それから泣きじゃくりました。
 あの日あの子が、思いもかけないところを示して輝いたのは、私には神さまのお計らいだとしか思えません。そしてそういう場を教会の青少年活動は用意できるのです。そのことを御理解いただいて一層のご支援を願いたい。もちろんお子さんをお持ちのかたは、是非スカウトにお子さんを託していただきたい。決して「損はさせません」。今年の経験から、一層その思いを深くしました。


(この「教風」は、2014年10月に掲載されたものです)
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